線記号の視覚変数として挙げられるのは、形、太さ、濃淡、模様等でしょう。形は定性データと、太さは定量データと結びつくのが一般的です。主題図では、ある事象を表すのにどの記号を用いても構いませんが、一般図では実線と分断線との使い分けに決まりがあり、可視的なものを実線で表現することは有名です。あまりにもよく知られているルールですから、主題図の作成にも踏襲するのが適当でしょう。
名目尺度を線記号で表現した地図はよく目にします。一般図の地形や境界、交通の定番表現法と言ってもよいでしょう。基本的には線種で表現し、実践、破線、点線を使い分けます。鎖線が使われることもありますが、破線と点線とを組み合わせたものですから、特異な印象を受けるものでもありません。この他にも単線と複線との区別は有効ですし、点の代わりに〇や×を代用して区別する等、名目尺度を多様に表現することが可能です。つまり線の種類は工夫次第で膨れ上がるのです。ただし名目尺度においては、線の太さを変えることは推奨されていません。線の太さは数量を暗示するため、定量的データに用いた方が良いからです。典型例は流線図でしょう。こちらは定量的データなので、線の太さという変数が多用されます。
このように名目尺度における、線記号の表現の幅を紹介すると、全てが実用的であるかのように錯覚する人もいます。しかしそれは誤りです。実際は実用的な線種は限られています。確かに組み合わせ次第で線種は無限に存在し得るのですが、その中には製図に適さないものも多く含まれます。無理な製図は地図を複雑なものに変えてしまい、地図に求められるべき「明瞭性」が消失してしまいます。