主題図は作成者の裁量が大きい地図です。記号の定義等も、一般図より自由に決定することができます。だからといって全く無秩序なのではなく、データと記号とが、それぞれの性質に影響されることで自然と結びつくようになっています。これが主題図の文法とも呼べるものです。また、タイプ別にみても、どの地図記号がどのタイプの主題図に使われているのかが法則となっていることに気付くはずです。もちろん一般図の文法と比べれば、その性質が異なっているのは確かです。

これまで地図に関する書籍は沢山出版されていますが、一般図と主題図、それぞれの文法の違いについて詳しく解説しているものは皆無に近いでしょう。例えばデータと地図記号との関連について専門家が取り上げたとしても、両者の文法が混同する形で紹介、解説してしまっているのです。要は、主題図と一般図とを完全に分別して、それぞれの文法を説明しなければなりません。

ところで、そもそも言語における辞書、文法、修辞について理解していない人も多いので、ここで簡単に説明したいと思います。辞書とは、言葉をある順序に並べながら、それぞれの言葉の意義や語源、用例について簡潔に説明した書物を指します。文法とは、文を構成する語の配列や、語形変化の法則を指します。また、文章構成上の形式を指すこともあります。修辞とは、言葉を整え、修飾することで、読んだ者、聞いた者が、その文や文章を美しく、巧みであると感じるような技術一般を指します。

こうした言語学上の意味を地図にもそのまま当てはめることはできませんが、類似した概念として援用することは可能でしょう。つまり、地図にも辞書、文法、修辞という概念が存立し得るのです。

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