地図記号がもたらす地図表現の豊かさは、特徴的な地図を見れば一目瞭然です。例えばドット図を見て下さい。ドット図は単位値のドットを並べているだけの単純な図ではありますが、結果的に分布の状況が一目で分かるようになっています。ドットの密度にも意味があり、そこからはかなり多くの情報を得ていることになります。メッシュ図も優れた主題図です。グリッドを一般図に重ね合わせただけの地図ですが、一つのマスに様々情報が詰め込まれ、マス同士の比較も容易に行うことができます。

主題図のこうした表現の豊かさに地図記号が貢献していることが分かりますが、一般図ではどうでしょうか。例えば国土地理院が発行している一般図の代表例として、2万5千分の1の地形図を例にとりましょう。そこでは定性的な表現は見られるものの、定量的な表現は皆無に近く、主題図に比べて貧相だと言わざるを得ません。それでも敢えて抜き出すと、線記号が道路の序列を表現していたり、三角点や標高点の数値が示されていたりするのが挙げられます。他の地図では、都市が人口のレベルで色分けされたりしています。

いずれにしても、主題図とは異なり、名目尺度のデータ表現が中心となっています。等高線等が彩になっているくらいであり、主題図の多様さには叶いません。地質図、土地利用図、分布図、流線図、路線図、カルトグラム、ドット図等は地図の種類として知られていますが、主題図の彩りを物語って余りあるのではないでしょうか。地図の名前が表現形態そのものを表しているとは限りませんが、主題図の発展可能性が高いことをお分かりいただけたと思います。

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