“地図学が対象にする地図とはいったいどのようなものでしょうか。
私たちは日常で何気なく無意識に地図という言葉を使っていますが、どういうものかと問われたときに、即答できる人は少ないのではないのでしょうか。「地表を縮小したもの」や「地表を記号で表したもの」といった漠然としたイメージは持っているものの、詳しくはよく判っていない人がほとんどでしょう。

興味深いことに、英語の地図学の本を見ても定義が載っているものは比較的少なく、例えばマーキ(Muehrcke,1978)は地図を「環境の地理的イメージ」とかなり広く定義しています。これは、人間が頭の中で考えていることを図的に表現したもの(mental または cognitive map)も含まれているからです。これに対し、彼はふつうの外的要素を表した地図を cartographic map と呼んでいます。
私たちが通常地図学で対象とするのは後者です。

ロビンソンはこれについて、地図を第1に「地表を距離、面積、方位、事象などの指標に従って系統的に縮小したもの。」と定義しています。
また、第2に「現実と縮小した結果の関係を表すものが縮尺」であり、「地図は平面に描かれる」ものとしています。地球儀は地図と呼びますが、「立体模型などは普通地図と呼ばない」ことになっています。
そして、第3に「地図とは選択された特定の事象を簡略化、分級化など一般化した結果で示している」もの、それが地図なのです。
この定義はほぼオックスフォード英語辞典に載っているものに沿っています。”