一般図と主題図とでは、それらを貫く文法の運用に差があることをご存知でしょうか。どちらも表現媒体であることから、言語に擬えることができる点に違いはないのですが、主題図の方が表現の自由の程度が大きいため、両者に文法や修辞の差が生まれるのです。

一般図は、言わば辞書を中核とする地図表現です。各記号が何を指し示すのかについても厳格に定められており、そこから逸脱することは許されていません。つまり作成者個人の感覚に依った「修辞」は御法度とされているわけです。他方、主題図も一般図と同じく、ある程度辞書らしきものを基にして作成されますが、応用辞書とも言うべき運用法が許されています。これだけでは抽象的で分かり辛いでしょうから、例を挙げましょう。

地図記号には線で表現するものがあります。一般図であれば、大体の地図はどの線が何を指し示すのかについては統一されていますし、「線の太い順」といった順序についてさえ、違いが無いものです。それに対し、主題図では作成者が自身の感性に従って、どの線が何を示すのかをある程度自由に定義することができるのです。


この両者の違いが何故生まれるのかについては、こうした説明だけでは理解に苦しむことでしょう。では分かり易いように、言語で説明することにしましょう。我々は言葉を話す時、つまりしゃべる時、殊更文法を気にして話しているわけではありません。どちらかと言えば、どのように事象や事態を「修飾」するのかを、考えているのではないでしょうか。主題図も同様で、製図の際、文法に意識が向かうことはあまりありません。つまり文法と修辞とが離れており、製図のシステムを強く意識することはないのです。その結果、主題図の表現形態に幅が生まれ、優れた修辞が実現する可能性が高まります。

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